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英語教育

「子どもへの英語教育の必要性」 応用言語学博士 萓 忠義

執筆者 :応用言語学者 学習院女子大学教授 萓 忠義

目次

1. はじめに

私たちが生きる現代社会では、グローバル化が日々加速しています。この社会の変化の中で、英語は世界共通語としての地位を確立し、国際的なコミュニケーションを行う上での鍵となっています。特に将来を担う子どもたちにとって、英語は単なる他国の言語という存在ではなく、未来の可能性を広げる重要なツールになっています。英語を理解し使いこなす能力は、子どもたちにとって新たな世界への扉を開く重要なスキルになります。

今回のコラムでは、「なぜ子どもたちに英語が必要なのか」、そして「なぜ英語学習を幼少期から始めるべきなのか」について詳しく掘り下げ、「幼い時から英語を学んだ場合の将来展望」についても説明していきます。本稿をご覧の保護者の皆さまや教育関係者の方々に新しい視点を提供し、一緒に子どもたちに必要な早期英語教育のあり方を考えていければと思っています。

2. 英語力の必要性:未来を切り開くスキル

私たちは既に、「英語が単なる外国語である」という考えを超越した時代に生きています。今日、英語は世界のどこでも通用する国際共通語として、特別な位置を占めています。例えば、私たちが目にする多くの情報は英語で配信されていることが多く、インターネット上の情報の大部分は英語で書かれています。最新の科学技術、医療、教育、さらには国際ニュースや政治の動向に至るまで、英語を理解できれば、日本語に翻訳されるまで待つことなく、元の情報に迅速にアクセスできます。これは英語を学ぶ子どもたちにとって、世界の最先端の知識に直接触れられることを意味しています。

また、英語は国際的なビジネスで使用される言語であり、外資系企業、多国籍企業、日系商社における国際的なプロジェクトでのコミュニケーション言語となっています。さらに、英語は国際的な学術界でのコミュニケーションにも不可欠です。世界のトップ大学や研究機関では、研究発表や学術論文執筆のほとんどが英語で行われています。英語を学ぶことで、国際ビジネスの機会や学術研究への可能性が広がり、世界の舞台で活躍することができるのです。

さらに、パーソナルな場面でも英語の重要性は明らかです。私たちが個人的に鑑賞する映画、音楽、文学作品の多くが英語で作られています。英語はエンターテインメントの世界でも中心的な役割を果たしており、日本語を介さずこれらに直接触れることで、子どもたちは異文化を理解し、創造力を高めることができます。また、英語を通じて、世界中の人々とコミュニケーションをとり、異なる文化や背景を持つ方々との交流を体験することができるのです。英語を学ぶことで、異文化体験ができ、視野を広げ、多様性を理解し、共感する力が子どもたちには育つのです。

以上のように、英語の学習は単に言語能力の向上ということにとどまらず、子どもたちの人生において幅広い影響を与えます。情報収集、グローバルな就職、最先端の研究、エンターテインメント、国際交流など、英語を身につけていれば、子どもたちが将来できることが大幅に増えるのです。グローバル化が進む現代において、英語教育は子どもたちの未来のために不可欠な投資と言えるでしょう。

3. 幼少期からの英語学習のメリット

ここまでの説明で英語の重要性はお分かりいただけたと思いますが、「なぜ英語学習を幼少期から始めるべきなのか」とお思いになる方も多いかと思います。実際、「幼いうちからではなく、大人になってからでもよいのでは?」という声をよく耳にします。次に、「なぜ早期英語教育が必要なのか」という疑問に答えるべく、話を進めさせていただきます。

幼少期に英語教育を始めることの最大のメリットは、「臨界期」と呼ばれる言語習得に適した時期に英語に触れることができる点です。臨界期とは、子どもの脳が言語に対して柔軟な時期であり、言語を効率的かつ効果的に習得できる発達段階を指します。この時期、子どもたちは言語を学ぶことに対して、生まれながらに備わっている生得的な能力を発揮し、英語を母語(日本語など)と同じように吸収することができるのです。特に、発音や流暢さに大きく影響し、子どもたちは英語の発音を自然な形で習得し、無理することなく英語を話すことが可能になります。

また、子どもたちの認知発達にも良い影響を及ぼすことが知られています。早期英語教育を通じて、思考力、創造力、解決力など、多面的な脳の発達が促進されます。特に、母語とは異なる言語構造に触れることで、子どもたちは柔軟な思考を身につけ、異なる視点から物事を考える能力が身につくようになります。

さらに、幼少期から英語を学ぶことで、子どもたちは多文化理解と寛容性を早くから身につけることが可能です。英語を通じて異なる国や文化に触れることで、子どもたちは多様な価値観や生活様式を学び、国際的な感覚を養うことができます。これは将来、国際的な環境で活躍する際に大きな強みとなります。また、英語を通じて世界のさまざまな情報源にアクセスすることができ、国際的な出来事や課題に対する理解も深まるのです。これらの知識は、子どもたちがグローバルな視点を持ち、国際社会での意思決定や問題解決をする際に役立つ重要な要素となります。

このように、幼少期からの英語学習は、言語能力の向上において多大なメリットがあるだけではなく、子どもたちの認知発達、多文化理解、そして国際社会における意思決定能力の形成にも大きく寄与し、将来に多大な影響を与えます。子どもたちの未来を考え、幼少期からできるだけ英語に触れる機会を増やすことが、子どもたちの可能性を広げ、グローバルな舞台で成功するための素地を築くのです。

4. 幼いうちから英語を学んだ子供たちの未来展望

ここまで「英語の重要性」と「早期英語教育を行う理由」について述べてきましたが、最後に、「幼い時期から英語に親しんだ子どもたちが、どのような将来を歩むのか」を一緒に考えていきたいと思います。早期英語教育をすることで、どのような未来が待っているかを意識することは、幼い子どもの仕事ではなく、大人の仕事です。保護者の皆さまには、お子さんの20年後、30年後を見据えて、英語を勉強した子どもたちにどのような利点があるのかを思い描き、理解していただきたいと考えます。

まず、英語を早いうちから学んだ場合の未来展望として、「世界の一流大学で国際的な教育や知見を身につけられる」ことが挙げられます。世界大学ランキング(Times Higher Education World University Rankings 2024)を見ても、トップ校のほとんどは英語で授業が行われている大学になっており、最先端の教育を受けたければ英語圏の大学に進学することが必須となります。ちなみに、日本の大学でこのランキングの100位内に入っているのは、29位の東京大学と55位の京都大学のみです。私立大学では、慶應義塾大学が601-800位圏内、早稲田大学が801-1000位圏内となっており、世界的な観点から見ると、日本の高等教育の水準はさほど高くないことが分かります。幼いうちから英語を学び、高等学校卒業時までに高い英語力を身につけておけば、世界のトップレベルの高等教育機関で学べるのです。そうすることで、最新の学術的な知見や国際的な研究にアクセスでき、学問的な探求の幅が日本で勉強するよりも広がるのです。

また、英語力を高めておけば、「国際的なキャリアへの道が開ける」という未来展望もあります。英語は世界中の企業や組織で広く使用されており、英語を支障なく使いこなすことができれば、海外での就職や異文化間プロジェクトへの参加が容易になります。さらに、日本語のみ話せる場合と比べて就職できる選択肢は増え、年収にも大きな差が出ると言われています。例えば、外資系およびグローバル企業転職を扱うヒューマングローバルタレントの調査(2022)によると、英語力による年収差は、50歳代男性で1.5倍、50歳代女性で2.2倍あると報告されています。明らかに、高い英語能力は大きなアドバンテージになると言えます。国際的なビジネス環境では、多様な文化的背景を持つ人々とのコミュニケーションが英語で日常的に求められるため、英語力が高く、流暢に英語を操れる人が重宝され、その結果が年収という形で反映されていると考えられます。英語をビジネスレベルで使用できる人材が少ない日本では、英語が堪能なバイリンガル人材は優遇されるのです。

これらの点をまとめると、英語を学ぶ子どもたちの未来には、充実した高等教育環境と国際的なキャリアの機会が待っていると言えます。早期英語教育は、子どもたちがグローバル社会で成功し、充実した人生を送るための重要な第一歩となるのです。

5. まとめに

本コラムでは、子どもたちに早期英語教育を施すことの意義とその効果に焦点を当てて解説し、言語学習に最適な「臨界期」に英語教育を開始することの重要性を述べてきました。この時期に英語に触れることで、子どもたちは言語を自然に、そして効果的に身につけることができます。このような早期英語教育は、英語スキルの向上だけでなく、異文化への理解や柔軟な思考力を育むためにも極めて有効であり、将来のキャリア形成の基盤にもなるのです。私たちには、子どもたちが国際的な舞台で活躍し、幅広い可能性を追求できるよう、質の高い英語教育の機会を幼少期から提供する責任があると言えます。

執筆者 :応用言語学者 学習院女子大学教授 萓 忠義

 

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