中学受験に英語力は必要?―広がる英語入試と、今からできる準備
目次
2. 「英語入試」といっても内容は一つではない
3. 中学受験で求められる英語力とは
4. 受験に向けた効果的な英語学習
5. 英語力を「受験だけで終わらせない」ために
1.中学受験における英語の位置づけ
「中学受験を考えるなら、英語も早くから準備した方がよいのでしょうか」。近年、保護者の方からこのような質問を受けることが増えてきました。従来の中学入試では、国語・算数・理科・社会の4科目、または国語・算数の2科目が中心でした。しかし現在では、英語を選択できる入試や、英語資格を評価に利用する入試など、選抜方法が多様になっています。
首都圏模試センターの調査によると、2025年の中学入試では、首都圏の私立・国立中学校140校が英語に関わる入試を設置しました。2016年の64校と比べると2倍以上であり、英語入試は一時的な流行ではなく、中学受験における選択肢の一つとして定着したと考えられます。
その背景には、小学校の英語教育の変化があります。現在、小学校3・4年生では「外国語活動」、5・6年生では成績評価を伴う教科として「外国語科」が行われています。子どもたちは小学校の段階から、英語を聞く・話すだけでなく、読む・書くことにも少しずつ触れるようになりました。
2.「英語入試」といっても内容は一つではない
中学受験における英語の使われ方は、学校によって大きく異なります。英語1科目で受験できる学校もあれば、「国語・算数・英語」や「国語・英語」など、他教科と組み合わせて選択する学校もあります。また、筆記試験を行わず、英検などの資格を得点に換算したり、加点や試験免除に利用したりする学校もあります。
試験内容も、単語や文法、長文読解だけとは限りません。英語による面接、スピーチ、作文、グループ活動などを通して、自分の考えを伝える力を見る学校もあります。帰国生を想定した高度な入試と、国内で英語を学んできた一般受験生向けの入試とでは、求められる力も違います。
したがって、「中学受験には英検3級が必要」「英検2級があれば必ず有利」と一律に考えることはできません。英検4級程度から利用できる学校がある一方、出願資格として3級、準2級、2級相当以上を求める学校もあります。資格を持っているだけではなく、面接や作文を含めた当日の試験で英語を使う力が必要な場合もあります。
まず確認すべきなのは、志望校の最新の募集要項です。出願資格、科目構成、英語資格の有効期限、加点や得点換算の方法、面接の有無を具体的に調べることで、初めて必要な準備が見えてきます。制度は年度によって変更されるため、学校説明会や公式ホームページで確認することも欠かせません。
3.中学受験で求められる英語力とは
では、英語入試に挑戦するには、どのような力が必要なのでしょうか。大切なのは、取得級だけを見るのではなく、志望校の問題を実際に解くために必要な力を分けて考えることです。
筆記試験では、語彙や基本的な文法に加え、文章の要点をつかむ読解力が求められます。英語面接では、質問を聞き取り、自分の経験や考えをその場で組み立てて答える力が必要です。作文やスピーチでは、知っている単語や表現を使いながら、内容を順序立てて伝えなければなりません。英語の知識と、英語を実際に運用する力の両方が試されるのです。
英検は現在の力を確認し、学習目標を設定するための分かりやすい指標になります。しかし、英検の合格と中学入試の合格は同じものではありません。例えば、英検の問題には慣れていても、初めて読む長文について内容を説明したり、面接で追加の質問に答えたりすることに苦労する場合があります。反対に、会話には慣れていても、スペルや文法を正確に書く練習が不足していることもあります。
まずは「聞く・話す・読む・書く」のうち、どの力が育っていて、どこに弱点があるのかを確認しましょう。その上で志望校の出題形式と照らし合わせることが、最も効率的な受験準備につながります。
4.受験に向けた効果的な英語学習
受験対策では、最初から難しい問題を繰り返すより、英語の基礎を安定させることが重要です。単語は日本語訳だけで覚えるのではなく、音声を聞き、声に出し、短い文の中で使うようにします。文字・音・意味を結びつけて覚えることで、読解にもリスニングにも使える語彙になります。
次に、志望校の過去問題を早めに確認します。合格点を取れるかどうかだけでなく、長文の量、設問の指示、リスニングの速さ、英作文の語数、面接で問われる内容などを分析してください。過去問題は、受験直前に力を試すだけのものではなく、今後の学習計画を作るための資料でもあります。
さらに、英語を実際に使う経験も必要です。面接やスピーチは、模範解答を暗記するだけでは、質問の表現が少し変わったときに対応できません。先生や友だちとのやり取りの中で、聞き返す、言い換える、理由を加えるといった経験を重ねることで、状況に応じて英語を組み立てる力が育ちます。
ただし、中学受験では他教科との時間配分も重要です。英語を受験に使うのか、入学後に備えて継続するのかによって、必要な学習量は変わります。お子さんの得意・不得意と志望校の選抜方法を踏まえ、英語だけに偏らない計画を立てることが大切です。
5.英語力を「受験だけで終わらせない」ために
中学受験に英語を活用することには、受験校の選択肢が広がるという利点があります。しかし、英語学習の価値は、入試で得点することだけではありません。中学校に入学すると、扱う語彙や文法が増え、読む文章も長くなります。英語で発表したり、考えを述べたりする授業を行う学校もあります。英語は、中学に入学し高校に進学して「理系・文系」に分かれても長く付き合い続ける科目です。小学生のうちに英語を使うことに慣れていれば、進学後の学習にも入りやすくなるでしょう。
中学受験で英語を選ぶかどうかは、早い段階で決め切る必要はありません。まずは英語を楽しく使う経験を積み、お子さんの力や関心を見ながら選択肢を広げていく。その積み重ねが、受験のためだけではなく、進学後、さらにその先でも役立つ英語力につながっていくのです。
引用文献
1. 調査資料(英語入試導入校)
首都圏模試センター(2025)『英語(選択)入試導入校140校一覧〈2025年入試〉』
https://www.onetes.co.jp/common/pdf/nyushi_joho/nyushi_yoko_kekka/2025_english.pdf
2. 公的資料(学習指導要領)
文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編』
3. 公的資料(小学校英語教育)
文部科学省『平成29年改訂の小・中学校学習指導要領に関するQ&A(外国語)』


